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2020年度学位記・修了証書授与式 学長式辞 第2部

写真:学長 三井 知代
写真:学長 三井 知代

 本日、ここにご来賓の皆様のご臨席のもと、令和2年度神戸親和女子大学学位記・修了証書授与式を挙行できますことは、本学関係者にとりましてこの上ない喜びであり、ご出席の皆様には厚く御礼を申し上げます。

 ただいま、総合文化学科49名、心理学科46名、福祉臨床学科32名、ジュニアスポーツ教育学科80名、大学院修了生19名、通信教育部卒業生38名の方々に学位記及び修了証書をお渡ししました。

 晴れてこの日を迎えられた皆様ご卒業・ご修了おめでとうございます。神戸親和女子大学の教職員を代表して、心よりお祝い申し上げます。

 また、ご来賓の皆様にはご多忙の中、学位記・修了証書授与式にご出席賜りましたことを厚く御礼申し上げます。

 そして、これまでの長い間、卒業生、修了生の勉学を支えてこられました保護者、関係者の皆様におかれましては本日の学位記授与式を心待ちにしておられたことと存じます。皆様の本学へのこれまでのご支援を心より感謝いたしますとともに、ご卒業を心よりお慶び申し上げます。

 留学生の皆さんは母国との往来が難しい中、困難な状況に耐え、学業に専念し晴れて本日を迎えられましたことを教職員一同、心よりお祝い申し上げます。本当によく頑張りました。

 昨年の春から皆さんの大学生活は一変いたしました。学びの集大成を行い、社会に出る準備に勤しむ学生生活の最後の一年間を予期せぬ形で過ごすことになった皆さんは大いに戸惑われたことと思います。特に春学期は、大学キャンパスにおいて皆さんが教員や友人と共に直接語り合い、学び合う機会が少なくなりましたことを我々教職員は大変心苦しく感じております。

 しかし、オンライン授業、教員採用試験の準備、就職活動、卒業論文の作成など皆さんはこれまで体験したことのないコロナ禍での生活の中で、様々な困難を乗り越え夢の実現に向かって努力を重ねてこられました。私たち教職員は皆さんのそのような努力に心から敬意を表したいと思います。この一年間の貴重な体験を通して皆さんは困難を乗り越える強さと自信を得られたのではないでしょうか。

 4月から皆さんは「百年に一度」と言われる大変革の時代に新社会人として船出をしていくことになります。コロナ禍において一年にも満たない間にソーシャルディスタンス、テレワーク、デジタル化といった言葉が身近なものとなり、これまでの社会の価値観や常識、生活様式があっという間に変わってしまいました。ニューノーマルと呼ばれる時代が到来し、皆さんは古い価値観と新たな価値観が共存する社会を生きていくことになるでしょう。同時に急激な社会の変化に戸惑い、以前の生活に戻りたいと願う気持ちも皆さんはどこかに感じておられるかもしれません。変革の時代は、個人においても社会全体においても新旧の価値観や認識がせめぎ合う「混乱の時代」でもあるのです。

 私はそのような変化の激しい社会に巣立っていく皆さんの心にとめて頂きたい3つの言葉を贈りたいと思います。

 第1の言葉は「主体性」です。自分の意志で今現実に起こっている社会の課題を見つめ、その課題を解決するために自分は何ができるのかを考えてください。

 今回のコロナウイルスのパンデミックにより、グローバル化した工業化社会がこれまで抱えてきた様々な課題や矛盾が明らかになってきています。例えば世界の二極化、つまり富裕層と貧困層の格差が加速度的に拡大し、世界各地で混乱を生んでいます。このような社会的に大きな問題と、皆さんが4月から取り組む仕事を関連付けて考えていく際に大切な心持ちが主体性なのです。この世界を生きるひとりとして「他人事」ではなく「私事」として、皆さんには社会の課題を解決するために「私は何ができるのか」を考えて頂きたいのです。社会の課題解決には一人ひとりの主体的な取り組みへの姿勢が何よりも重要であり、そのような姿勢が他者との連携をより強化し、新たな社会を築き上げていく大きな力になるのではないでしょうか。

 そして様々な人々と社会の課題解決に共に取り組む時に必要なのが第2の言葉、「他者との相互理解」です。価値観、考え方、文化背景が自分とは異なる人々と勇気を持って向き合い、コミュニケーションを取り、お互いが理解できるように歩み寄ってください。自分たちとは考え方や価値観が異なる人々を排除せず、他者の視点に立って世界の課題を理解していくことにより、皆さんには多角的に物事を把握する力を手に入れることができるように思います。

 コロナ禍により、世界は医療はもちろんのこと、政治、経済、教育、福祉などあらゆる分野において、これまでの考え方では容易には解決できない難しい課題を私たちは突きつけられています。このような困難な課題を解決していくためには、皆さんは人々と共に広い視野に立って物事を考えていく必要があるのです。他者との価値観や考え方の相違、ズレは我々にとり非常に重要なものだと私は思います。違っているからこそ理解したいと思う。我々が今後大切にしていかねばならないコミュニケーションの原点は、そこにあるのではないでしょうか。

 そして変革の時代こそ、社会の動きから取り残されそうな人々を排除するのではなく、弱い立場にある人々に寄り添うような課題解決が求められると思います。2015年に国連サミットで採択された持続可能で多様性と包摂性のある社会実現のための国際目標「SDGs」における「地球上の誰一人取り残さない」という誓いが示す意味を、コロナ禍である今だからこそ皆さんに考えていただきたいと思います。

 第3の言葉は「自分の限界を超えていく力」、「超えていけ自分」です。皆さんは「レジリエンス」という言葉をこれまでの授業の中で聞いたことがあると思います。レジリエンスは日本語で言うと「精神的回復力」「変化や困難に柔軟に対応していく力」「ネガティブな出来事から立ち直る力」を意味します。レジリエンスとは「しなやかな強さ、柔軟さ」「諦めない力」とも言えます。たとえ失敗し、落ち込んだとしてもその経験をポジティブに捉え前を向いて立ち上がっていく、「失敗から回復する力」を卒業生、修了生の皆さんそれぞれが備えていると思います。加えて皆さんの能力の中には、まだ「今後成長していく力」が伸びしろのように眠っています。自分の中にある力を信頼してください。今後社会の荒波の中で様々な障害に出会った時に、自分の中に限界を超えて挑戦していく力がきっと沸き上がってくると思います。「超えていけ、自分」という本学の合言葉を、今後は自分自身へのエールとして唱えていただければ嬉しいです。

 世界の人々がコロナ禍という難局にいかに立ち向かい、困難を克服していくのか、今こそ皆さんはしっかりと目を凝らして社会の動向を見つめてください。同時に皆さんは本学での学びそして経験を糧に、これらの3つの言葉、「主体性」をもって社会の課題解決に向き合うこと、その際に「他者との相互理解」を深めることにより、困難な課題に取り組む力を得ること、そして「超えていけ自分」、勇気をもって自分の限界を超えていくことをしっかりと心に留めておいてください。

 先行きが見えない混沌とした時代こそ、皆さんの個性が輝く時代です。あなた独自の生き方を試すことが出来る時代なのです。本学で過ごした学生時代の思い出を胸に秘め、力強くそしてしなやかに、自分らしく、この時代を生きていってください。

 皆さんが本学で得た学び、経験、教職員や友人とのつながりのすべてが、この先の皆さんの人生を支える大きな力となることを確信しています。

 卒業、修了される皆さん一人ひとりが、私達教職員の誇りです。同時に、みなさんも神戸親和女子大学、大学院を母校として誇りを持って思い出してくださいますように願っています。

 最後に、皆さんの今後のご活躍、そしてご健康を心より祈念し、私の式辞とさせていただきます。

令和3年3月20日

神戸親和女子大学 学長 三井知代