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2018年度 学位記・修了証書授与式 式辞

写真:学長 三井 知代
写真:学長 三井 知代
写真:学長 三井 知代

本日、学部卒業生435名、大学院修了生9名、通信教育部卒業生31名の方々に学位記および修了証書をお渡しいたしました。晴れてこの日を迎えられた皆さん、ご卒業、ご修了おめでとうございます。神戸親和女子大学の教職員を代表して、心よりお祝い申し上げます。

そして、これまでの長い間、卒業生、修了生を見守り、応援してこられた保護者、関係者の皆様に感謝申し上げますと共に、ご卒業を心よりお慶びを申し上げます。

また、ご来賓の皆様にはご多忙の中、学位記授与式にご出席賜りましたことを厚く御礼申し上げます。

さて、本日本学を巣立っていかれる皆さんに、私は将来にわたって覚えておいていただきたい言葉「堅忍不抜」についてお話したいと思います。

「堅忍不抜」は現代と同じく激動の明治時代に、女子教育の重要性を唱え親和学園の礎を築いた校祖友國晴子が校訓として遺した言葉の一つです。友國晴子は社会の女子教育への強い偏見と逆風の時代に、校訓として「誠実」「堅忍不抜」「忠恕温和」の3つの言葉を掲げ、困難な時代を生き抜く新しい女性像を女子学生たちに示しました。「誠実」は自分にも他人にも誠実に向き合う心、「堅忍不抜」は強い意志を持ってやりぬく心、「忠恕温和」は思いやりの心という意味です。この3つの校訓はいずれも大切な心の在り方を示していますが、私は皆さんに特に「堅忍不抜」の心をしっかりと携えて生きていっていただきたいと願っております。

堅忍不抜は中国の書家蘇軾の『鼂錯論(ちょうそろん)』が出典と言われております。「堅忍不抜」は強い意志を持って、何事にも動じず、物事をやりぬく心です。友國晴子が強い意志を持って女子教育に専念したように、みなさんも自分自身の信念や価値観を大切に、何事かに情熱を傾け、生きていって下さい。

そのために今から「堅忍不抜」の心、つまり強い意志で物事をやりぬく心を持ってこの激動の社会を生きて行くために、重要な2つのことがらについてお話しします。それは自らへの問い「自分は何をやりたいのか、どう生きたいのか」ということと、物事をやりぬくための「くじけないしなやかな心」についてです。

現代の日本において、超高齢化・人口減少、グローバル化、科学技術の進化に伴う社会・経済の大変革時代が到来しつつあります。10年先の社会がどのような変化を遂げているのか、その予測がつきにくい先行き不透明な時代において、これまでの常識、規範、価値観が大きく揺らいでいく可能性があります。「周りの人々と同調し、皆で同じ方向、目標に向かって頑張って働く」という従来の日本社会のステレオタイプが崩れ、「多様性」「個別性」が尊重され、一人ひとりの個性が強く問われる時代に入っていくのではないでしょうか。それは素晴らしいことであると同時に「自分自身の在り方、アイデンティティに関わる問い」をかつてない程に私たちに強く突き付けられる時代が到来するということなのです。「何が正しいのか、どう生きていくべきなのか」というよりは、「私はこの社会で何をしたいのか、どう生きたいのか」と、皆さんの主体性がより強く問われるのです。

今、皆さんに問いかけます。「あなたはこの社会で何をしたいのでしょうか、どう生きたいのでしょうか」。はっきりと答えることができない方もおられるでしょう。あるいは、社会に出てから生きる方向性を見失うこともあるでしょう。「この社会で何をしたいのか、どう生きたいのか」は年長者の私たちにとっても難しく、若い皆さんにはなおのこと非常に答えづらい問いなのです。

はっきりとした答えを早急に出す必要はないでしょう。答えよりは「自分は何をしたいのか。どう生きたいのか」を生涯自分に問い続けるプロセスが何よりも重要であると私は思います。これからのみなさんの人生には様々な岐路が用意されています。就職、転職、恋愛、結婚、出産、子育て、転勤、病気、介護など。「自分はどう生きたいのか」を折々に自分に問い続けてきた人ほど、このような人生の岐路に立った時に、より自分らしく主体的に、そして柔軟に生きる道を選ぶことができるように私は思います。自分らしく、主体的に生きるということは自分の人生に全責任を持つということです。失敗や挫折を誰かの、何かのせいにしないということです。精神的に自立するということです。今後の社会において、堅忍不抜の心で強い意志を持って物事をやりぬくためには、皆さんは人生の折々に「自分は何をしたいのか、どう生きたいのか」と自分自身に問い続けることが重要になってくるのではないかと思います。自分らしく、主体的に生きようとする、その心の在り方が、強い意志、ぶれない姿勢、最後まで物事をやりぬく原動力になるのではないでしょうか。 そして本学で得られた知識、経験は、皆さんが自分らしく生きようとする時に、独りよがりにならないよう、広い視野で客観的に自分を見つめていくための基盤となるものなのです。

もうひとつ、堅忍不抜の心を持って生きていく上で重要なことは「しなやかな心」です。強い意志を持って物事をやりぬくには、しなやかな、折れない心が必要ではないでしょうか。

皆さんが社会で働く上で、挫折、失敗、失意の経験は避けて通れないものです。失敗したことが問題ではなく、失敗した経験を糧に、皆さんがどのような立ち上がり方をするのかが重要になります。失敗や失意に心が折れてしまわず、竹のようにしなりながらも少しずつ回復していく力が「しなやかな心の力」なのです。心理学で言われるレジリエンス、心の回復力です。数々の挫折や失敗をして落ち込んでも、そこから前を向いて一歩ずつ立ち上がる経験が、将来皆さんの「今回もきっと立ち上がれる」という自信になり、「何時かは光が見えてくる」という希望となり、生きる力をより強く鍛えてくれます。

今日、本学での最後の日に、皆さんに「常に自分自身がどう生きたいか」に向き合い、挫折や失敗を乗り越える「しなやかな心」を持って、「堅忍不抜」強い意志で物事をやりぬくことの重要性について、私の考えをお伝えしました。

先行きが見えない混沌とした時代こそ、皆さんの個性が輝く時代です。あなた独自の生き方を試すことが出来る時代なのです。本学で過ごした学生時代の思い出を胸に秘め、力強くそしてしなやかに、自分らしく、この時代を、この社会を生きていってください。

皆さんが本学で得た学び、経験、教職員や友人とのつながりのすべてが、この先の皆さんの人生を支える大きな力となることを確信しています。

卒業、修了される皆さん一人ひとりが、私達教職員の誇りです。同時に、みなさんも神戸親和女子大学、大学院を母校として誇りを持って思い出してくださいますように願っています。

最後に、皆さんの今後のご活躍、そしてご健康を心より祈念し、私の式辞とさせていただきます。

平成31年3月21日
神戸親和女子大学 学長 三井知代