2019年度 入学宣誓式 式辞
新入生の皆さん、ご入学おめでとうございます。本日ここに、通学部373名、編入学12名、大学院19名、通信教育部26名の皆さんをお迎えすることが出来ました。神戸親和女子大学の教職員を代表いたしまして、新入生の皆さんのご入学を心より歓迎いたします。
また、ご列席の保護者、関係者の皆様にも心よりお慶びを申し上げます。
さらに、本日多くの来賓の皆さまにご臨席を賜り、平成31年度の入学宣誓式を挙行できますことを厚く御礼申し上げます。
今から132年前、1887年(明治20年)、「新しい女性の創造」を目指し、親和女学校が神戸元町に開校しました。女性の教育に対する偏見、逆風の中、校祖友國晴子は女子教育の重要性を唱え、強い信念を持って本学園の基礎を築きました。そして1966年(昭和41年)には、神戸親和女子大学が開学し、今年54年目を迎えます。「豊かな人間性と高度な専門性を備え、社会的課題に主体的に取り組む人間の育成」という教育理念を掲げ、本学は優秀な女性人材を育んでまいりました。現在、日本の、世界の各所で本学の卒業生たちが自らの専門性を活かし活躍しています。明治、大正、昭和、平成と女性を取り巻く環境は激変しましたが、親和学園、神戸親和女子大学はそれぞれの時代に応じた「新しい女性の創造」、「新しい女子教育の創造」に取り組んできたと言えます。
そして本日平成31年4月1日は、新たな元号が発表される記念すべき日となります。平成から新たな時代に移行する時に、皆さんの大学、大学院生活がスタートするのです。来るべき新たな時代と共に、皆さんの今後の学生時代が希望にあふれ、実り豊かな時となりますよう祈っております。
さて現代社会は大きな変化の時を迎えています。少子高齢化、グローバル化、人工知能を始めとする科学技術の進化に伴い、日本の社会は今後、社会・経済の大変動時代を迎えるだろうと予測されています。その中で私たちは、社会の多くの課題に向き合い、解決する必要に迫られています。神戸親和女子大学の使命は、そのような課題の解決に積極的に、そして主体的に取り組むことができる人材を育てることだと私たちは考えています。
そのためには、私は新入生の皆さんには本学での学びを通して3つの超えていく力を身につけて頂きたいと願っています。3つの超えていく力とは、「課題解決力」、「コミュニケーション力」そして「自分の限界を超えていく力」です。今からその3つの超えていく力についてお話します。
1つ目は、社会の様々な課題や困難を粘り強く超えていく力、つまり「課題解決力」です。
この30年の間、世界では様々な地域で武力紛争、テロが多発し、多数の貴い人命が奪われました。犠牲者の中には弱い立場にある人々、特に多くの子どもたちが含まれています。今後、暴力的な紛争、対立を事前に予防するため、武力を使わずに紛争を解決するために、私達はどのような方策が取れるのでしょうか。
日本においては、平成の30年間は災害に苦しんだ時代でもありました。阪神・淡路大震災、東日本大震災、熊本地震、西日本豪雨災害など、多くの自然災害に見舞われました。今後も繰り返されると言われている自然災害に備えるために、私達はこれまでの経験から、何を教訓として後世に伝えていくことが出来るでしょうか。
これらの問いは、新たな時代に、我々に課せられた社会の課題なのです。現在社会の課題は教育、経済、福祉、医学、健康、エネルギー、環境、防災など、あらゆる分野に及んでいます。例えば「教育現場におけるいじめ問題」について考える時に、単に教育的視点からだけではなく、福祉、心理、医学、社会学的視点からといった多側面から、多元的なものの見方が重要になります。社会的課題を多くの観点から総合的に検討し解決する力を身につけるために、皆さんは、今日から本学で、幅広く、そして深く学ぶ必要があるのです。
私たちの社会が抱えている課題は複雑で一筋縄では対応できない困難さを伴っています。これからこのような世界で生き、社会的課題の解決に取り組んでいかねばならない皆さんには、それぞれの専門的知識や技能を基盤に、幅広い視野と豊かな教養に裏打ちされた課題解決力をぜひ身につけていただきたいと思います。
2つ目に皆さんにつけていただきたい力は「コミュニケーション力」です。国や文化、人種、社会、世代、性別など多くの境界を超えていく力です。自分とは異なる背景や価値観を有する多様な人とつながっていく力とも言えます。
神戸親和女子大学では、多くの学生が、海外研修生、海外留学生として、世界に出ていきます。また、最近では、中国やベトナム、韓国からの留学生も迎え入れています。昨年には、留学生と日本人学生が生活を共にする「国際交流寮」が学内に完成し、学生たちの交流を支援しています。
様々な文化・社会背景の壁を越えて、世界の人々と交流していこうとする時、自分と価値観や行動規範が全く違う人とどのようにして理解し合っていくのか、そのコミュニケーション力が問われます。もちろん英語をはじめとする外国語の能力も必要ですが、それ以上に重要なことは、自分とは異なる価値観や規範を持つ人々がいるという多様性への理解と尊敬の念、そして理解し合おうという意欲、好奇心です。
このつながっていく力、コミュニケーション力をつけることは、異なる国の人々との間だけではなく、日本の中で、本日この入学宣誓式で偶然隣同士になった学友にまずは「こんにちは」と勇気を出して声掛けすることからもはじまります。
お互いが意思疎通する中で、一人ひとりが多様な価値観を持っていること、その個性は何物にも代えがたい貴重なものであることを理解し、お互いの違いを尊重し、共に協力しあうことを学んでください。また、意見が対立する場合、双方の意見を尊重しながら、合意策を模索するための知識、知恵、経験を得て下さい。この「コミュニケーション力」が、一つ目の超えていく力「課題解決力」をより強靭なものとして、後押しし、支えていくのです。
3つ目の力は「自分の限界を超えていく力」です。この「自分の限界を超えていく力」が、3つの力の中で一番基盤となる力であり、第一の「課題解決力」、第二の「コミュニケ―ション力」の推進力となる力だと思います。
自分自身の力の限界に突き当たり、活路を見いだせない苦しい時は、どなたにもあることだと思います。皆さんにも、これまでの人生の中で様々な困難事にくじけそうになり、自信を失くし、落ち込みを経験されたことがあるでしょう。「自分の限界を超えていく力」は、決して順調に物事が進んでいく順風の時に出るものではなく、かえって上手く物事が進まない逆風の時にこそ、出てくる力であるように私は思います。自分の限界、様々な壁を感じ、苦しい時こそ、前を向いて立ち上がっていく、一歩目の前の階段を登ってみる、この挫折から回復する力が「自分の限界を超えていく力」となり、人間を成長させる基盤になるのではと思います。苦しみながらも一歩前に歩みを進めた時、小さな階段を登った時に、皆さんはこれまで見たことがないような新しい景色を見、前に進んでいく希望と自信を得ることができるでしょう。
昨年度から本学では「超えていけ、じぶん」という言葉を合言葉としてきました。先行きの見えない不安定な社会だからこそ、皆さんに、前向きに力強く生きていっていただきたいという私達教職員の願いがこもっています。
そのために、社会の様々な課題や困難を粘り強く超えていく「課題解決力」、国や文化、人種など多くの境界を超えていく「コミュニケーション力」、そして「自分の限界を超えていく力」、この3つの超えていく力を本学での学びや経験から身に付けていただきたいと切に願っています。
神戸親和女子大学では皆さんが成長していくことができる機会を数多く用意しています。皆さんの挑戦を暖かく見守る教職員がいます。何事にも失敗を恐れず挑戦し、自分自身の可能性を拡げてください。また、卒業、修了までの間、自由に学ぶことが出来る環境を与えられた幸運に、そして皆さんを見守ってくださる保護者の方々に、常に感謝の気持ちを忘れないで下さい。
そしてこれからの皆さんの本学での学びや出会いが、就職や資格取得のためだけではなく、皆さんの生涯にわたっての大きな支えとなりますよう願っています。本日、神戸親和女子大学に入学された皆さん、保護者、ご関係者の皆様方に、今一度心からのお祝いを申し上げ、みなさんがこれからの充実した大学生活を過ごされるよう祈念し、私の式辞とさせて頂きます。
あらためて、ご入学おめでとうございます。
平成31年4月1日
神戸親和女子大学 学長 三井知代