大学案内

2024年度入学式 式辞

 新入生の皆さん、神戸親和大学ご入学おめでとうございます。また、ご家族、ご関係者の皆様にも、お慶びはひとしおのことと存じます。心からお祝い申し上げます。

 今日から、新入生の皆さんの素晴らしい大学生活が始まります。でも、大学で何をすればいいんだろう、大学ってどんなところなんだろう。大学ではどんな勉強をするんだろう、そもそも何のために大学に行くんだろうなど、皆さんの頭の中には、幾つもの期待と不安や疑問も渦巻いていることと思います。大きく人生のステージが変わることはわかるのだけども、あるいはいろんな情報は得ているので何となくイメージはできるのだけれども、具体的にはどんな生活を送ればいいんだろう、と感じている人も少なからずいるのではないかと思います。私からは、ここで今日から大学生として何をすればいいのかについて、いくつかアドバイスをしてみたいと思います。
 まずは、とにかく今日の、この晴々しい雰囲気に、思いっきり身を委ねて心地よさを感じることです。紛れもなく皆さんは、今、この入学式の晴れの場にいます。皆さんの努力の賜物です。これまでに、神戸親和大学には、2万人近い卒業生たちが、皆さんと同じように、この場の晴々しい雰囲気を味わってきました。そして、その後の人生の大きな糧にしています。まずこの場に主人公として参加している自分を大いに褒めてあげてください。皆さんは、素晴らしい大学生活のスタートに、今、まさに立つことができているのです。
 その上で、次に考えて動いてみてほしいことがあります。それは、これから4年間で、自分は神戸親和大学をどうやって使い尽くしてやろうかと、考えたり動いたりするということです。「大学をどう使い尽くすか」って、どういうこと、と思うかもしれません。食堂とか学内のショップをどう使うかとか、サークルに入ってどんなことするかということではありません。ここで考えてほしいことは、神戸親和大学を使い尽くして4年間でどんな自分にしてみたいか、ということです。幼稚園や保育園、学校の先生にもなれます。心理の専門職になることもできます。国際交流を進める職にもつけます。大きな企業の社員として活躍することもできます。スポーツ選手として活躍したり、クラブを運営してもいいです。自分で会社を起業することも可能です。大学院に進学して研究者になることもできます。今日からスタートする大学の4年間で、いろんな人生のあり方を皆さんは自分自身で自由にデザインすることができます。どんな自分にしてみたいか、ということを100%自由に考えることができる始まりの日が、この入学式の日です。もちろん4年間過ごしているうちに、どんな自分になるか何回も変わっていいとも思います。でも今日を境に、思った自分にしてみたいときに、神戸親和大学をどのように使い尽くしてやろうかと考えることを、ぜひ始めてみてほしいのです。

 神戸親和大学には、どんな講義や研究があるんだ?、先輩はどんなところに就職しているんだ?、どんな先生方がいらっしゃるんだ?、食堂にはどんなメニューがあるんだ?、近くにはどんなカフェがあるんだ? とにかくいろんなことをまずは自らで探らなければ、神戸親和大学が自分にとってどんなポテンシャルを持っているのかわかりません。わからないのに、どのように使い尽くすことができるのか、そしてどのように、思った自分になることにつながっていくのか、デザインできないと思います。また、神戸親和大学を深く知った時に、こんなふうに使い尽くして自分をこんなふうに育ててみたいと、考えていることがさらに発展するかもしれません。お勧めしたいのは、神戸親和大学のポテンシャルを探るために、参加する、聞く、知らない人とも話をしてみる、調べてみるなど、自分からどんどん動いてみことです。隣に座っている知らない友人に、入学式が終わった後、すぐに話しかけてみるのもその第一歩かもしれません。そんなふうに、自分から動きだすことを、周りの人や環境が支えてくれる期間、これが大学生活の基本的な姿だと考えてください。

 このように、思った自分になるために自分で周りの環境を探ったり考えたり動いたりすることができる人のことを、主体性がある、と言います。ただ、思った自分になるためにということに加えて、思った社会にするために自分がどう成長し、友達や家族や地域の人とも神戸親和大学をどう使い尽くしてやろうかと考えることができることが加わった人のことを、「新しい主体性」を持っている、とも言います。昨今の世界的な流行り言葉で言うと、エージェンシーを持っている人と言います。自分と社会の両方のより良いあり方、このことをウェルビーイングと言いますが、ウェルビーイングの実現に向けて、自分で考え行動し、また多くの人と力を合わせて考え行動できる人のことを、エージェンシーを豊かに持っている人というわけです。

 神戸親和大学における皆さんのビジョンは、個人と社会の両面でウェルビーイングを実現するためのエージェンシーを身につけること、まさしくこのことに方向づけられることが重要です。人工知能が発展し仕事のあり方や生活の基盤が大きく変化するこれからの社会において、皆さんが入学して主に学修する焦点となる、グローバルな文化、人間の心理、教育、そしてスポーツに共通して求められる力が、このエージェンシー、という力です。これは、模擬テストで何点とれたとか、偏差値でどれだけ高い大学に入ったかということと、そもそも一致するものではありません。大学を卒業するときに、これからの個人と社会に強く求められる力です。多くの人は、この意味で大学の捉え方を時に勘違いしてしまいます。大学は入るまでにどれだけ優秀であったかを競う場ではありません。むしろ、入った後に何をするのか、それこそが問われる場です。神戸親和大学では、2万人近くの卒業生たちに、このような力を育ててきた優れた大学です。私たち教職員一同は、この点に関してものすごい自信を持っています。どうしてそんなふうに言えるのか。Webサイトを見たりSNSに頼るよりも、自分の目で探り行動して確かめてみてください。そして、時に、大学生活に迷ったり、どうしたらいいかわからない時があれば、すぐに、本当に即座に、近くの教職員や友人や先輩に相談してください。エージェンシーを育てるのに高い優れた環境には、みんなが助け合うコ・エージェンシーと呼ばれる共同的な力も豊かに育まれています。そしてこのようなエージェンシーを育む大学の持つ本当の力は、大学案内や口コミや偏差値といった情報からは実はわからないものです。

 神戸親和大学の前身は、明治20年に神戸元町にて開校しました。創設されたのは、友國晴子先生です。広い世界観と社会的行動力を持つ新しい女性の育成を建学の精神とされました。女性が高等教育を受けることがまだ一般的ではなかった時代に、です。その精神を受けつぎ、昭和41年に親和女子大学が鈴蘭台のこの地に開学しました。その伝統をさらに男性にも開き昨年度動き出したのが、二期生となる皆さんを迎え入れる神戸親和大学です。こうして育まれてきた150年近くの伝統と革新が、目に見えない力となって皆さんを支えてくれます。

 最初の私の話をここでもう一度思い出してみてください。そんな、「神戸親和大学」を「自分はどう使い尽くしてやろうか」と考えたり動いてみたりするスタートの場に、皆さんは、今、こうして立つことができている、というこの現実です。皆さんのこれまでの全ての生活を褒めてあげてください。皆さんの一人ひとりの今が、これほど輝く時間はこれまで今日をおいておそらくありません。ようこそ神戸親和大学へ、という言葉を、教職員を代表して、あらためて私から皆さんにお送りしたいと思います。そして、心からお祝い申し上げたいと思います。

 最後に「神戸親和大学を使い尽くす」コツを、これも少しだけお伝えしておきたいと思います。「楽しい」よりも「面白い」と思えることに、迷わず思い切って飛びつくことです。そして、その場で没頭し夢中になることです。神戸親和大学には、カリキュラムや課外活動をはじめとして、プロジェクト、社会連携、研究会、ワークショップなど、実に様々なプログラムが、伝統と革新の中で皆さんに提供されます。「楽しい」という感情は大切なものですが、そこにとどまらず「面白い」と思うことに飛び込んでいってください。躊躇せずに、踏み込んでください。なぜなら「面白い」という体験には、「わからないものに出会った」「失敗しても何回もトライできる」「自分や世界が広がっていく」などの、創造性の伸長が豊かに用意されているからです。そして、そのように自分自身で考えて動いて飛びついて夢中になる様子は、周りから見れば「前に、前に」進んでいると見えます。そんな時に、ふっと急に、「自分はこんなことが好き」とか「もっともっとこれに関わってやっていきたい」とか「こんなふうに自分はなりたい」という信念が湧いてくるものです。スポーツの試合をやっていても、自分自身が前に進んでいなければ、味方からパスが来ることはありません。皆さん自身が、今日から「大学をどう使い尽くしてやろうか」と前に進むことを、「面白い」と思えることに夢中になることから始めてください。それがコツです。

 今日からは、皆さんの一人一人が主人公の、いわば「大学冒険物語」を、自分自身で描いていくことになります。もちろんこの物語には、責任も伴います。今日から、皆さんは、すでに学生であり、責任を持って生活するという意味では高校生と違ってすでに社会人です。法を遵守することは、等しく皆さん自身の責任において厳しくすでに求められています。でもだからこそ、高校生にはない大きな自由が皆さんの前には広がっています。卒業するまでに、必ず、一人一回はその冒険物語を、学長である私に語りに来てください。ここにいる一人残らずの新入生が、4年間を面白さに溢れさせ、神戸親和大学を使い尽くして自分を成長させ、また次のステージに旅立つ日が来るような素晴らしい大学生活を送ることを願っています。大学生活をとことん面白く過ごしてください。そして、自分だけでなく、すぐにでも今日から、新しい主体性を身につけるために、社会にも目を向けてください。私たちも全力で皆さんを支えていきます。
 自然豊かな鈴蘭台の本学キャンパスに、大学生活のスタートラインとしてたたれたことを心から喜び、私の式辞としたいと思います。
 本日は、まことにおめでとうございます。

令和6年4月1日

神戸親和大学 学長 松田恵示