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2018年度 入学宣誓式 式辞

写真:学長 三井 知代
写真:学長 三井 知代

新入生の皆様ご入学おめでとうございます。本日ここに、通学部417名、編入学7名、大学院15名、通信教育部 93名(編入生を含む)の皆さんをお迎えすることが出来ました。神戸親和女子大学の教職員を代表いたしまして、新入生の皆さんのご入学を心より歓迎いたします。

また、これまで皆さまを支えてこられたご家族や関係者の皆様に対しても心よりお祝い申し上げます。

さらに、本日多くの来賓の皆さまにご臨席を賜り、平成30年度の入学宣誓式を挙行できますことに、厚く御礼申し上げます。

さて現代の社会は少子高齢化、グローバル化、科学技術の進歩などその変化は加速度的に進んでいます。日本も世界も大きな変化の時代を迎えています。その中で私たちは、社会の多くの課題に向き合い、解決して行く必要に迫られています。神戸親和女子大学の使命は、そのような課題の解決に積極的に、そして主体的に取り組むことができる人材を育てることだと私たちは考えています。

そのためには、私は新入生の皆さんには本学での学びを通して3つの「超えていく力」を身につけて頂きたいと願っています。3つの「超えていく力」とは、「課題解決力」、「コミュニケーション力」そして「自分の限界を越える力」です。今からその3つの超えていく力についてお話します。

1つ目は、社会の様々な課題や困難を粘り強く超えていく力、つまり「課題解決力」です。現在の社会の課題とはどのようなものでしょうか。

教育、医療、介護、エネルギー、防災、食の問題など、社会の課題はあらゆる分野に及んでいます。皆さんの日々の生活に非常に密着した課題も多くあります。課題は簡単な言葉で言うと「困りごと」だと思います。人は常により良く生きていきたいと願っています。よりよく生きていくためには、いくつもの困りごとを解決して行く必要があります。自分自身の困りごとを、あるいは自分以外の他者の、さらに社会の困りごとを解決していくためには、その課題を様々な視点から客観的に眺めること、そして目的に応じて私たちにできることを明確にすること、実際に行動してみること、そこから新たな課題を明らかにすることの繰り返しになります。

私たちの社会が抱えている課題は複雑で一筋縄では対応できない困難さを伴っています。これからこのような世界で生き、課題に向き合っていかねばならない皆さんには、地道に粘り強く課題に取り組んでいく課題解決力をぜひ付けていただきたいと思います。

2つ目に皆さんにつけていただきたい力は「コミュニケーション力」です。国や文化、人種、社会、世代、性別、障害など多くの境界を超えていく力です。自分とは異なる多様な人とつながっていく力とも言えます。

神戸親和女子大学では、年間100名近い学生が、海外研修生、海外留学生として、世界に出ていきます。また、最近では、中国やベトナムからの留学生も迎え入れています。様々な文化や習慣の壁を越えて、世界の人々と交流していこうとする時、自分と価値観や行動規範が全く違う人と、どのようにして理解し合っていくのか、そのコミュニケーション能力が問われます。もちろん英語をはじめとする外国語の能力も必要ですが、それ以上に重要なことは、自分とはまったく異なる価値観や規範を持つ人々がいるという多様性への理解と尊敬の念、そして理解し合おうという意欲、好奇心です。

このコミュニケーション力は日本人同士にも当てはまります。こうして、この会場に座っておられる新入生の皆さんも一人一人が異なる個性を持ち、その個性は何物にも代えがたい貴いものです。是非、皆さんも多くの様々な個性を持つ人々との交流を通して、自分を見つめ、コミュニケーション能力を伸ばしていってほしいと思います。

3つ目は今までの自分を超えていく、「自分の限界を超える力」です。皆さんの能力の中には、伸びしろ、つまり成長していく力が眠っています。人は案外自分自身の能力や特性について十分に理解していないのではないでしょうか。皆さんも中学、高等学校時代に「英語、数学が苦手」「人づきあいが下手」など、少しネガティブな自己イメージを持っておられるかも知れません。しかし「苦手な自分」「できない自分」が、「できるかもしれない」と希望を持つことができた時、人は変化していくことができます。私はこの「自分の限界を越える力」を身につけるためのキーワードは「レジリエンス」という言葉なのではないかと思います。

「レジリエンス」、新入生の皆さんには聞きなれない言葉かもしれません。

レジリエンスは日本語で言うと「精神的回復力」「変化や困難に柔軟に対応していく力」「ネガティブな出来事から立ち直る力」を意味します。私はレジリエンスとは「しなやかな強さ、柔軟さ」「諦めない力」だと思います。たとえば台風などで巨大な街路樹がぽっきりと根元から折れることがありますが、竹は大雪や台風の時は曲がりながらもめったに折れることはなく、天気が回復するとまた元通りにまっすぐになります。レジリエンスの力は、しなやかに曲がる竹をイメージすると分かりやすいかも知れません。

私たちもたとえ失敗し、落ち込んだとしてもその経験をポジティブに捉え、前を向いて立ち上がっていく、この失敗から回復する力が人間を成長させる基盤になるのではと思います。

神戸親和女子大学では皆さんが成長していくことができる機会を数多く用意しています。皆さんの挑戦を暖かく見守る教職員がいます。失敗を恐れず、少し背伸びをして一つ上の階段に登ってみてください。必ず新しい世界が開けることと思います。

親和学園は昨年、開学130周年を迎えました。

明治という日本社会の激動期に校祖友國晴子は女子教育の重要性を唱え、強い信念を持って学園の基礎を築きました。現在だからこそ「友國晴子は先見の明があった」と評価されていますが、当時は偏見と逆風の中でも友國晴子は「女子に教育は必要である」という信念を貫き通したのだと思います。そして131年後の現在、みなさんも友國晴子の時代と同じように大きな変化の時代に生きています。コンピューターの技術革新により、今後10年から20年程度のうちに、人間が行う仕事の半分近くがロボットなどの機械に代わられるという衝撃的な予測もあります。これまでの社会の常識、価値観、規範が大きく変わっていくかも知れません。「何が正しいのか」、「どう生きていくべきなのか」誰も答えは分かりません。みなさんは迷いながらも自己実現して行く道を探っていかねばならないでしょう。その時に重要な指針となるのは「自分は何をしたいのか、どう生きたいのか」という思いです。社会的評価、価値観に従うのではなく、自分自身の信念、思いを大切にしてください。変化の時期は今までなかった様々なものが生まれ出る創造の時でもあります。どうかみなさんも、自分の信念を大切に、3つの超えていく力を武器にして、自分らしく創造的に生きていってください。

私は神戸親和女子大学の強みのひとつは、教職員が学生一人一人に寄り添い、学生の立場に立ち、学生を育てる教育を行うことができる大学であることだと思います。皆さんの成長の可能性を確信し、温かく見守りつつも、時には厳しく鍛え、社会に送り出していくことが本学の社会的使命であると考えています。

これからの皆さんの本学での学びや出会いが、就職や資格取得のためだけではなく、皆さんの生涯にわたっての支えとなりますよう祈念し、私の式辞とさせていただきます。 あらためて、ご入学おめでとうございます。

平成30年4月1日
学長 三井知代