大学案内

2023年度入学式 式辞

 令和5年4月1日、本日神戸親和大学が開学いたしました。

 新入生の皆さん、ご入学おめでとうございます。本日ここに、神戸親和大学一期生として通学部生467名、大学院生15名の皆さんをお迎えすることができました。この中には45名の留学生の皆さんが含まれています。

 神戸親和大学の教職員を代表いたしまして、新入生の皆さんのご入学を心より歓迎いたします。また、皆さんをこれまで支えてこられた保護者、関係者の皆様にも心よりお慶びを申し上げます。

 さらに、本日来賓の皆さまにご臨席を賜り、入学式を挙行できますことを厚く御礼申し上げます。また、本日は神戸親和大学としての初めての入学式ということで、これまで本学の基盤を築き、本学とともに歩んできてくださいました同窓生をはじめ多くの関係者の皆様にご臨席いただいております。本学を愛し、支えてくださっております皆様と共に、この記念すべき日をお祝いできますことを心から感謝申し上げます。

 さて、神戸親和大学一期生となる皆さん、私たち教職員は皆さんとともに本日船出し、力を合わせて神戸親和大学の新たな歴史を創っていくことができますことを大きな喜びとともに身の引き締まる思いでおります。

 親和学園のルーツとなる親和女学校は1887年、明治20年に神戸元町に開校しました。校祖・友國晴子先生は明治時代、女性が教育を受けることがまだ一般的ではなかった時代に、女性が社会で活躍する時代が将来到来することを見通し、英語など先進的な教育を実践してきました。その精神を受けつぎ、1966年昭和41年に親和女子大学が鈴蘭台の地に開学し、これまで2万人近い卒業生を送り出してまいりました。半世紀以上にも及ぶ本学の歴史、伝統、一人ひとりの成長を何よりも大切にする教育方針、そして多くの同窓生や関係者の方々の温かなまなざしに支えられて、皆さんは神戸親和大学第一期生として新たに歩み始めることになります。

 本日ここで私は皆さんに神戸親和大学のパーパス、つまり本学の存在意義と、ビジョン、そのためにどのような大学でありたいかというめざす大学像について皆さんにお話しいたします。なぜならこの二つの概念はこれから本学で学ぶ皆さんにとり、非常に重要な事柄だからです。

 パーパスは本学の存在意義という意味です。なぜ神戸親和大学が皆さんに教育を行うのか、その存在意義は、「社会の新たな価値を創造する人」を育てていきたいと私たちは考えています。そしてそのパーパスの実現に向けて、私たちは「ともに学び ともに成長する」大学であることをビジョンとしてめざしていきます。

 まずなぜ本学は「社会の新たな価値を創造する人」を育成することをパーパスとして大切にしているのかについてお話します。

 現在、社会は変化の激しい時代だと言われています。温暖化など地球規模での環境の変化、ロシアのウクライナ侵攻など各地で勃発する戦争や紛争、2月に発生したトルコ・シリア大地震などの自然災害、新型コロナウイルス感染症のパンデミックなど、社会の多くの困難を私たちは一つひとつ解決していきながら、社会の未来を切り拓いていかねばなりません。
 これらの課題は、我々のこれまで得た知識や経験、常識、価値観では解決することのできない難問が数多くあります。社会の激動に伴い、これまで我々が拠り所としてきた常識や価値観は瞬く間に古くなっていきます。コロナ禍で皆さんが体験した対面授業からオンライン授業への移行のように、我々は今後、経験したことのない難問に常に対処しながら、これまでの常識や価値観の枠を超えて最適解を出していく生活を送っていくことになるでしょう。
 今後、皆さん自身が実現したい社会の未来像を思い描き、その実現に向かって新たな価値を創り出すことで、未来の社会を構築していかねばならないのです。
 皆さんが今後、実現したい社会はどのような未来社会でしょうか?今、心の中で、どのような社会に、そして世界に自分は暮らしていきたいのかを想像してみてください。
 争いのない平和な社会でしょうか。人々が自分自身の幸せをそれぞれが追求できる社会でしょうか。
 皆さんはこれまでの常識や社会の枠組みも超えるような「新たな価値」を創り出すことによって、まだ誰も見たことがない未来の社会への道を開いていくことができるのです。「新たな価値」は、今は想像もつかないものであり、後から自らその存在価値を生み出していくものです。例えば、携帯電話にカメラやパソコンの機能が付け加えられたように、今では当たり前の機能が、開発当時は予想外の新たな価値の付与でした。
 皆さんがこれから学び始める、教育、スポーツ、心理、国際文化の学びの中に、そしてこれから皆さんが志す職業の中に、皆さん自身が新たな光を当て、これまでとは違った価値観を見出していってください。
 例えば教員を目指す方々にとり、皆さんが理想とする未来の学校は、どのような教育を行っているのでしょうか。今話題の対話型AIのチャットGPTを利用すれば、今後私たちは知りたいことをAIとの対話で得ることができ、単に答えを出すだけならAIに勝ることは難しくなっていくでしょう。それではAIを使いこなす教育とはどうあるべきなのでしょうか。
 また、スポーツにおいて「楽しむこと」と「勝ち負けにこだわること」のバランスをどう取っていけばよいのでしょうか、そしてそれを子どもたちにどう伝えていけばよいのでしょうか。
 心理カウンセラーは人々の心の不調の治療に携わるだけではなく、心の不調を事前に予防する取り組みができるのでしょうか。
 AIが多くの言語を即座に翻訳することが可能となった場合、英語や中国語等私たちの語学の学び方はどう変わって行くのでしょうか。
 このような多くの問いの先に、新たな価値の創造につながる道が開けてくるのです。そしてそのような変革の道を超えていくことができる力を持っているのが、皆さん若い人々なのです。
 これまで社会に変革が起こった時、その原動力となったのは常に若い人々でした。わが国で明治維新という変革を主導したのは20代、30代の若者でした。近年になり、アップルの創業者のひとり、スティーブ・ジョブスは21歳の時に創業し、グーグルの創業者のセルゲイ・ブリンとラリー・ペイジはともに25歳の若さで創業しています。
 若者のエネルギー、障壁を超えていく力、未来への好奇心、そしてチャレンジ精神は、困難を乗り越え、変革を起こす力になり、社会の未来を変えていきます。社会の変化に対応するのではなく、皆さんが「社会の未来を変えていく」、そのような主体性と気概を持って学生生活を送って頂きたいと思います。
 そして、「社会の新たな価値を創造する」力を養う際に、必要となってくるのが本学のビジョン「ともに学び、ともに成長する」という大学の環境です。
 複雑な社会の課題を解決するためには、皆さんは一人ひとりが単独ではなく、多くの人々と繋がり、その知識や経験をひとつにつなげて新たな知恵を生み出していくことが必要になります。文化、国籍、価値観などの異なる多様な人々と様々な観点から話し合い、力を合わせて課題解決の糸口を探っていかねばなりません。
 皆さんは「私たちはどのような未来を創り出していきたいのか」を多くの人々と語り合い、「そのためにはどのような経験や知恵が必要で、どのような人々と一緒に取り組んでいかねばならないのか」を共に考え、実際に学内、学外、世界の多くの人々を巻き込んで話し合い、そのつながりの中で、新たな知恵を生み出していってください。それを実現するのが「ともに学び、ともに成長する」本学の場なのです。
 本年度より大学はそのような皆さんのために、社会で様々な人々とともに学び合う実践教育プログラムSAILを開始します。船が航海するSAILという言葉に、皆さんが自分自身で社会の荒海を超えていく力をつけるプログラムという意味を込めています。
 SAILは学校園・企業でのインターンシップ、ボランティア活動、企業との協働プログラム、海外留学・研修、教育実習など大学の枠を超えて、社会の様々な人々と出会い、力を合わせて行う実践教育プログラムであり、皆さんは学内での座学と学外での実践を行き来することで、学びを広げ、深めていきます。
 また、実践教育プログラムSAILや学内での学びを基盤から支えるために、自分自身の生き方や人生全般を見据えたキャリア教育、ワーク&ライフデザインも一年生の春から新たに開始いたします。
 今私は皆さんに「社会の新たな価値を創造する」人となり、社会の未来を変えていく気概を持って学んでいって欲しいこと、そしてそれを実現するために本学は「ともに学び、ともに成長する」大学であることを皆さんにお伝えしました。
 私たちはこれまで一期生の皆さんから、「新たな神戸親和大学の歴史を自分たちの手で刻んでいきたい」、「新しい大学の文化を皆と力を合わせて創り上げていきたい」と望んで本学に入学してきてくださったという声をいくつか聴いております。私たち教職員は皆さんのそのような主体的な姿勢が何よりもうれしく感じています。
 社会の変動が激しく将来の予測が不可能な今こそ、一人ひとりの多様な個性が貴重なのです。本学は一人ひとりの学生の成長を何よりも大切に考えています。

 本学では皆さんが成長していくことができる機会を数多く用意しています。皆さんの挑戦を暖かく見守る教職員がいます。何事にも失敗を恐れず挑戦し、自分自身の可能性を拡げてください。

 本日多くの方々に見守って頂きながら、神戸親和大学は開学し、一期生の皆さんをお迎えすることができました。この日を無事に迎えることができましたのは、多くの同窓生の皆様、保護者・関係者の皆様をはじめ、本学に関わってくださった全ての皆様のご理解とお力添えのおかげと心より感謝申し上げます。

 皆さんの本学での学びや出会いが、皆さんの生涯にわたっての大きな支えとなりますよう願っています。

 神戸親和大学に入学された皆さん、保護者、関係者の皆様方に、今一度心からのお祝いを申し上げ、皆さんの今後の実り多き大学生活をお祈りしつつ、私の式辞とさせて頂きます。

 あらためまして、ご入学おめでとうございます。

令和5年4月1日

神戸親和大学 学長 三井知代