理事長・学長 ご挨拶

MESSAGE

神戸親和大学
創立60周年を迎えて

学校法人親和学園

理事長 山根耕平

はじめに

お蔭さまで神戸親和大学は、今年、創立60周年を迎えることができました。学園関係者はもとより多くの人々のご理解とご支援のお蔭であり、ここに学園を代表して心よりの感謝とお礼を申しあげます。

さて思い起こせば、明治20(1887)年に親和女学校を創始として親和学園も、今年創立139年を迎えています。校祖友國晴子先生は、わずか生徒2名から親和女学校を再興・発展させ、明治・大正と激動の時代を乗り越え、今日の親和学園(親和中学校・親和女子高等学校・神戸親和大学)の礎を築きました。その建学の精神は、校祖自らの手になる「誠実・堅忍不抜・忠恕温和」という校訓にあり、今日まで脈々と継承されて現在に至っています。

現代に目を向けてみましょう。

終わりの見えない戦争・紛争、世界の国々で自国ファースト・権威主義やポピュリズムの台頭、気候変動により世界各地で頻発する自然災害等々、実に未来の読めない、いわゆるVUCA(変動性・不確実性・複雑性・曖昧性)の高い時代、コトラー的に言えば、"Ups and Downs"に激しい「乱気流の時代」になっています。

一方で、テクノロジーの革新は目覚ましく、今や「AI革命」に時代とも言われています。2020年11月にChatGPTを開発したOpenAI社のCEOであるサム・アルトマンは「生成AIの進化はなにものも止めることができない暴走列車である」と豪語しましたが、今や、私たちは、いや、社会全体がこの暴走列車に乗っている感があります。

さらに、日本の現況について言えば、少子化が加速度的に進行しています。2024年の出生数が68万人台であったことから、今後、10年間で約3割の児童数が減少することになります。これは、ピーター・ドラッカーが言ったように「すでに起こった未来(the future that has already happened)」です。こうした少子化の未来を想定して、中央教育審議会の答申「知の総和」では「これから先の急速な少子化は、中間的な規模の大学が1年間で90校程度、減少していくような規模で進んでおり、定員未充足や募集停止、経営破綻に追い込まれる高等教育機関が更に生じることは避けられない。」と述べられています。

このように、大学(教育機関)をめぐる状況は、このように誠に厳しく、しかも、マルクス・ガブリエルが言うように、いくつもの問題群が絡み合った「ネステッド・クライシス(nested crisis)」の状況にあります。そうした状況に対して私たちはどう対応するのか。60周年という節目の年に、大学の未来について展望してみたいと思います。

1.今、求められる教育とはなにか

(1)人間存在とその多様性への畏敬

今に時代が複雑で読めない時代だからこそ、教育の哲学はシンプルで、それを表現するビジョンも簡潔であることが大切だと思っています。その哲学とは、教育は人間存在自体とその生への畏敬・尊敬に基づくものであり、そのことは教育の前提あり目標でもあります。さらに言うと、そのことは同時に、ひとり一人の人間としての違いや多様性を畏敬・尊敬することを意味しています。ティム・インゴルトに倣って「教育は差異を個人/人格であることの源泉そのものとして育むのである。」とも言っていいでしょう。あるいは、ブルーナーは指摘したように、教育とは子どもたちひとり一人の「成長の可能性への畏敬」に基づくものであるとも言えるでしょう。

現代のように、真偽不明の情報が溢れ、ひとり一人の差異や多様性が軽視され、その結果、人間同士のつながりが希薄になり、社会的な分断が急速に進みつつある時代だからこそ、もう一度、人間存在への畏敬を教育の根幹に位置付ける必要があると思います。

(2)共に学び共に成長する

教育とは単に知識の伝達やスキルの修得に収れんするものではありません。大学教育においても、教師と学生の関係は、単に「教える」「教えられる」という関係を越えて、互いに自らを開き互いの生を共有すること、まさに「生の共有化(commoning)」「学びの共者化(togethering)」、さらには教師と学生の、学生同士の「チーミング(teaming)」が教育の中心であると考えています。今の時代、このように名詞を動名詞に変換することで、教育のダイナミズムを復活させる必要があると思います。重ねて言えば、教師と若者が互いの好奇心、感受性、そして開放性を共有することで、互いが成長する過程こそ教育の過程であると理解しています。そういう大学にしたいと考えています。

このような教育の認識から創立60周年の機に親和教育のモットーを「ともに!答えは自分で見つけよう」としました。

(3)「両利きの教育」

今後、2つの教育事業、いわゆる「両利きの教育」の必要性が高まると考えています。両利きの教育とは、これまでの伝統的な特色ある既存の教育をさらに「深化・発展」させることと、来る時代を読み新たな教育事業を「探索・開拓」するというものです。この観点から、大学では、つねにこれまでの強みをさらに「深化・発展」させると同時に、未来を拓く新規の教育に挑戦して参ります。具体的には、教育の質的向上、社会貢献、国際交流・貢献の3つの分野で両利きの教育を展開して参ります。

2.神戸親和大学の未来を拓くビジョン

(1)ビジョン
  1. ①私たちが理想とする大学とは、学生ひとり一人が人としてその存在を畏敬される自由な大学であり、それゆえに、ひとり一人の学生が未来の希望となる大学である。
  2. ②大学は学生と教職員が互いに尊敬し合い、共に学び共に成長する共同体である。
  3. ③他者と異文化を理解し、人種・国籍に囚われず、他者と協働して社会的な課題の解決に努力する人を育成する大学である。
  4. ④広い視野をもち、人と社会の為に生成AIをツールとして使いこなす知性とスキルをもつ人を育成する大学である。
(2)パーパス(社会的な存在意義)

VUCAの高い、乱気流の時代においては、大学のパーパスは、一様ではありませんが、一義的には、民主的で平和な社会の担い手を育成することにあります。他者を尊敬し、異文化を尊重し、他者と協働して社会的な課題の解決に取組み、社会の未来を切り拓く人を育成することが、私たちの大学のパーパス(社会的な、存在意義)です。

(3)神戸親和大学の教育を支える価値観

私たちが親和教育を支える価値観としてもっとも重視するのは、自由、誠実、尊敬、信頼、協働、体験、多様性、包摂性、サステナビリティである。

3.結び

大学創立60周年を迎えて、上記に述べました通り、改めて、未来を切り拓くべく親和教育の原点を、その教育理念とパーパスを確認いたしました。教職員一同、それぞれがリーダーシップを発揮するとともにチェンジメーカーとなり、未来に挑戦して参ります。どうぞ今後とも神戸親和大学の教育研究にご理解とご支援を賜りますようお願い申し上げます。

末尾になりましたが、皆様のご健勝とご活躍を祈念申し上げます。

60周年を
迎えるにあたって

学長 松田恵示

女子大学としてスタートした本学が共学化して3年が経ちました。そして60周年にあたる今、全学年で男女の学生が在籍する共学化4年目を迎えることになります。ダイバーシティ(Diversity)が価値として大切にされる現代社会において、「共学化」や国を超えて学び合う大学の「グローバル化」、さらには壁を超えて地域や社会と大学が混じり合う「共創化」は、新しい大学像を考えるときに必須の取り組みとなっています。本学では、カリキュラム改革や学部・学科改組などを通じて、こうした課題にビジョンを持って対応し、研究と教育の実践を進めています。

60周年を迎えた今、本学は期待された役割を担い続けるために、さらに大きく飛躍しようともしています。まずは、2027年度に新しく「心理学部(仮称)」を設置することを構想しています。これまでの2学部体制から3学部体制への進化を目指します。また、現在の文学部もグローバルな社会に応じた研究教育の深化を目指して大きくカリキュラムを改革することを検討しています。加えて「先生になるなら親和」として地域に定着した教育学部は、スポーツ教育の専門家の養成も含めて、変化する社会を牽引し、着実に採用されるだけではなく、卒業後の何十年もの社会を先導して活躍できる教員養成を多面的に進めています。全学的には、2025年度よりスタートした特色ある取り組みである「地域共創科目」をさらに深化発展させていくとともに、スポーツ活動の強化・活性化にも施設整備を含めさらに力をいれる予定です。

本学が目指すものは、本学のビジョンに基づいて、本学を志してくれた学生に、他の教育機関と比べても驚くほど力が伸びる教育を提供し、「とともに学び、ともに成長する」これからの人生の礎を築くことです。そして、これからの時代で求められるであろう「新しい主体性」、つまり「問いを自ら立て、よりよい社会と自己の変化のために他者と協働して責任を遂行でき、常に振り返りの中で自己を創りかえることができる力」を育てることです。また、このために資する多様な研究を質の高い教職員のもと進めるとともに、その成果や教育活動を社会に発信し連携・協働し、地域の発展に大学が大きく寄与することです。

多様な人々が共に学び合い、社会とつながりながら創造的な活動を行う学びと実践の場である「双育型ソーシャル・クリエイティブキャンパス」(Co-learning Social Creative Campus/略称「CoSCC(コスク)」)と、個人・コミュニティ・技術・文化といった多様な視点や立場が交差し、相互に学び合いながら新たな知を共創するネットワーク型の学習共同体である「多視点双育ネットワーク( Multiperspective Co-Learning Network))の実現を目指します。

60年の節目を振り返り、祝い、成果を評価するとともに、これからさらにその歩みを着実に進めることを改めて深く自覚したいと思います。60周年の機に掲げられた「ともに! 答えは自分で見つけよう」を合言葉に、こうした普段の取り組みに全力で向かっていきたいと思います。引き続き、ご理解とご支援を賜れましたら幸いです。どうぞよろしくお願い申し上げます。